ボルダリング好きエンジニアの雑記帳

クライミング、ボルダリング、モノづくりについて情報が少ないなーと思った事を書いていきます。

【クライミングシューズ分解】スポルティバ マーベリックを分解してみた

 

スポルティバ マーベリック(La Sportiva Maverink)のソールに穴が空いたので、分解してみました。

スポルティバのクライミングシューズの中でも、ニッチ?な人気を誇る柔らかスリッパの構造に迫ります。

 

 

 

 

マーベリックの特徴

P3システム採用で、非常に柔らかいのですが足をサポートしてくれます。シューズ自体は柔らかいですが、足と合わせて必要な剛性を確保してくれています。

トゥ側はノーエッジで、指先感覚は鋭いです。スメッジングにも適します。

攻め過ぎないサイズだと、履き心地はとても良いです。

 

レビュー記事も参考にしてもらえるとうれしいです。

 

sphendon.hatenablog.jp

 

ソール

セパレートタイプです。つま先側のソールを剥がします。

 

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ソールをはがした写真です。

ノーエッジなので、ソールはつま先上側まで回り込んでいます。

かかとから伸びるP3システムの黄色いゴムが、足裏前半分をすっぽり覆っています。

 

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つま先は、側面までP3のゴムが覆っていて、つま先と土踏まず、かかとをつないでいる事が分かります。

ノーエッジでなければ、このつま先の形は作れません。ノーエッジは、P3システムと相性が良さそうです。

2枚目の写真で、アッパーの縫い目が親指側のゴムの下まで伸びている事が分かります。立体的にアッパーを作る工夫がされています。

 

P3システムのラバー 

爪先から土踏まずをおおって、かかとに伸びるP3のゴムをはがします。

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1枚のゴムでできています。接着剤での接合部が多いと、長い時間をかけてじわじわとずれる事があります。一体の部品でダイレクトに重さを支えることで、それを防げると思われます。

アッパーのレザーとマイクロファイバーの縫い目も、荷重がかかってずれると伸びや型くずれの原因になりますが、P3のゴムでうまく隠れる位置にあります。

 

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シャンクと思われる不織布が見えました。親指側の側面は、不織布がランドの下に入り込んでいます。つま先と母子球(親指関節の付け根)の力をかかとに伝える工夫だと思います。

つま先の先端部分はランドの回り込みが少ないです。直接アッパーが見え、よけいな物でつま先感覚を悪化させないようにしているようです。

 

つま先のランド

 はぎ取ります。

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シャンクが親指の側面付近まで回り込んでいます。

ランドは中指、薬指、小指側が幅広になっていますが、普通の形です。

外側の土踏まずには、穴が6箇所開いています。シューズが折れ曲がった時の力を逃がす工夫のようです。

 

ヒールカップ

ヒールのソールを剥がします。

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ヒールカップのゴムは2枚構成です。サイドのゴムを上から中央のソールが覆っています。

 

シャンク?のような不織布

剥がしてみます。

  

シャンクと呼んでいいのかわからない、ペラペラの化繊の不織布のようなものが入っていました。

伸びませんが、剛性は無くグニャグニャに曲がります。

 

 

かかとにかかる体重を、つま先まで伝える役割があるようです。また、ゴムとアッパーの底部のレザーが伸びて型くずれするのを、防ぐ効果がありそうです。

 

アッパー

上はマイクロファイバー、下はレザーでできています。今回は生地の分解はしませんでした。

マイクロファイバーは1枚、レザーは2枚で、立体的に縫い合わせてあります。

 

上側のマイクロファイバーはレザーより伸びにくく、足のあたりがソフトです。

底のレザーは、剛性と丈夫さを確保しながら、足裏に馴染んできます。

履き心地と耐久性をうまく両立しています。

 

まとめ


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こんな簡単な構造のスリッパシューズ作るのに、どれだけ考えているのか…

スポルティバさんスゲー!

はき心地も良く、個人的にはジム履き最高だと思ってます。

 あと、下のような事が分かりました。

 

・P3システムのゴムにより、少ない部材で靴に剛性を持たせる事ができる。

・アッパーの拘束が弱いスリッパでも、必要な剛性を確保し易い。

・マーベリックのシャンクはグニャグニャの不織布。引っぱられても伸びないけど、よく曲がる。

・P3システムとノーエッジは相性が良さそう。組み合わせると、ランドの折り返しを小さくでき、つま先のゴムの重なりを薄くしてつま先感覚を良くできる。

 

マーベリックは、考え抜かれたサポーターのようなシューズと感じました。硬い靴底ではなく、ゴムとシューズの構造で足をサポートしています。

素足に近い直感的な感覚で操作でき、最低限必要な剛性は確保されているシューズと言えるでしょう。

 

P3システムはパテントが出ているので、そのうち読み込んでみたいと思います。