クライミングシューズ、ソールの硬さについて考えてみた。
クライミングシューズのソールの硬さ比較は、過去に記事にしました。
もう少し突っ込んで、硬いソールと柔らかいソールの使い心地について、個人的な意見を書いてみます。
そもそも摩擦とは何なのか?
クライミングシューズのソールは、摩擦でホールドをとらえている訳ですが、摩擦はそんなに簡単な現象では無く、実際に起こっている現象はかなり複雑です。
摩擦は物理屋さんの中でも専門家がいる分野なので、とりあえず、私の理解の範囲内だけでポイントをまとめると、以下の3つに分けられます。
- ゴムが凹凸に沿って変形して、それを押し返す力
- 実際に接触しているところが、ゆるい結合を作る
- ゴムに突き刺さった先端部が、ゴムを削りながら掘り起こすのにかかる力
この中で、ゴムの場合は上の二つが支配的になると思われます。
また、接触している面同士も、実は凹凸がかみ合って接触している面積は少なく、上からの圧力によって実際に接触している面積が変わるので、余計に面倒です。
つるつるの面に乗るとき
一番わかりやすいのは、よく磨かれた河原の石や、ホールドのつるつるの面です。
大きな凹凸はないので、微小な凹凸の表面にゴムがしっかり押し付けられるとよく止まります。
Five TenのステルスMi6ラバーは、ガラスで止まるのをイメージしているそうですが、あんな感じで柔らかくて粘るゴムが最適と言えるでしょう。
エッジやとがった粒に乗る場合
この場合は、大きな凹凸でゴムが大きく変形するので、つるつるの面に乗るときとは様子が異なります。
- ゴムは体重を受けて十分大きく変形する
- すべる方向に力がかかると、ゴムが凹凸を横方向に押して抵抗力になる
- 柔らかすぎるゴムは、ふにゃっと曲がって凹凸が外れてしまう
- 場合によっては、突き刺さった部分がゴムを引き裂いてしまう
特にスラブや垂壁では、フットホールドにほぼ全荷重がかかります。
柔らかすぎるゴムだと、所謂、荷重に負けた状態になってじりじりと外れていきます。
ある程度硬さがあって、大きな抵抗力を負担できたほうがよくなります。
スメアでボテなどの砂ぶきのさらさらの面に乗るとき
これは、エッジや粒に乗る時と、つるつるの面に乗るときの間くらいになると思います。
- ゴムの変形で表面が変形して隙間が埋まり、接触面積が増えたほうが良い
- 小さな力で変形して、たくさんの凹凸に対し押し返す力が働いたほうが良い
- ゴム自体が粘着性を持っている効果は、つるつる面ほど重要じゃなさそう
体重が軽い人、強傾斜で足の荷重があまりかからないシーンでは特に、柔らかいラバーがよいと思います。
まとめ
まあ、当たり前の結論になってしまって全然面白くないのですが、実際のシューズで何が起こっているかはいまいちよくわかりません。
あと、粒と周辺にゴムを押し付けてスメア気味に立ちこむときなど、上の分け方に入らない動きもあります。
ただ、Five Tenが岩によってラバーを使い分けるべきと言っていたのはうなずけます。
個人的な感覚では、以下の印象でした。
- Vibram XS EdgeやStealthC4は、体重が重めの人が垂壁やスラブで使うのによさそう。
- Stealth HFなどは、体重60kgの私だと垂壁でエッジに立ちこむには若干柔らかすぎる。スメアは最高。強傾斜もStealth HFくらいの柔らかさが足が外れなくて好き。
- Mi6ラバーは、表面が粗い砂ぶき面でのスメアではどんどん削れてしまって、HFのほうが好感触。表面が細かい場合とつるつるの面では最高。
もっとシューズ使いが上手くなったら、ラバーの特性も考えて踏み方を調整できるのか?とも思うのですがどうなんでしょうね。